2026.01.05

虫歯の進行段階と治療法の選択基準

「虫歯があります」と言われても、その程度や必要な治療内容が分からず不安に感じることはありませんか?虫歯は進行段階によって適切な治療法が大きく異なります。また、同じ段階の虫歯でも、位置や範囲によって治療の選択肢は変わってきます。この記事では、虫歯の進行段階ごとの特徴と、それぞれに対する治療法の選択基準について、歯科医師の視点から詳しく解説します。

虫歯の発生メカニズムと
進行過程

虫歯の発生メカニズムと進行過程

虫歯は、口の中の細菌が作り出す酸によって歯が溶かされる疾患です。その進行には段階があり、それぞれの段階で歯の構造への影響が異なります。

虫歯の原因となる3つの要因

虫歯は「細菌」「糖質」「時間」という3つの要因が重なることで発生します。口の中には常に数百種類の細菌が存在しますが、その中で虫歯の主な原因となるのが「ミュータンス菌」と「ラクトバチラス菌」です。

ミュータンス菌は、糖質(特にショ糖)を分解して「グルカン」という粘着性の物質を作り出します。このグルカンによって細菌が歯の表面に強固に付着し、プラークを形成します。プラーク1mgには約10億個の細菌が存在し、これらの細菌が糖質を代謝する過程で酸を産生します。

産生された酸によって、歯の表面のpHが5.5以下になると、歯の主成分である「ハイドロキシアパタイト」という結晶構造が溶け始めます。これを「脱灰」と呼びます。通常は唾液の緩衝作用によってpHが中性に戻り、唾液中のカルシウムやリン酸によって歯が修復される「再石灰化」が起こります。しかし、脱灰と再石灰化のバランスが崩れ、脱灰が優位になると虫歯が進行します。

C0からC4までの進行段階

虫歯の進行段階は、「C0」から「C4」までの5段階に分類されます。Cは「Caries(カリエス)」という英語の虫歯を意味する言葉の頭文字です。

C0

C0は「初期虫歯」と呼ばれる段階で、歯の表面が白く濁って見えますが、まだ穴は開いていません。この段階では歯の表層のエナメル質から少量のミネラルが溶け出していますが、適切なケアによって再石灰化が期待できます。

C1

C1は「エナメル質う蝕」で、虫歯が歯の表層のエナメル質に限局している状態です。エナメル質には神経が通っていないため、痛みを感じることはほとんどありません。歯の表面に茶色や黒色の変色が見られたり、小さな穴が開いていたりします。

C2

C2は「象牙質う蝕」で、虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで進行した状態です。象牙質には「象牙細管」という微細な管が歯髄(神経)に向かって走っており、冷たいものや甘いものがしみるようになります。象牙質はエナメル質よりも柔らかいため、この段階から虫歯の進行速度が速くなります。

C3

C3は「歯髄炎」で、虫歯が歯髄まで到達した状態です。歯髄には豊富な神経と血管が分布しているため、激しい痛みを伴うことが多くなります。初期には冷たいものがしみる程度ですが、進行すると何もしなくてもズキズキと痛む「自発痛」が出現します。

C4

C4は「残根状態」で、歯の頭の部分(歯冠)がほとんど崩壊し、歯の根だけが残っている状態です。この段階では歯髄が完全に壊死しているため、一時的に痛みがなくなることもありますが、根の先端に膿が溜まり、再び激しい痛みや腫れが生じることがあります。

進行段階別の治療法と選択基準

進行段階別の治療法と選択基準

虫歯の治療法は、進行段階に応じて大きく異なります。ここでは各段階での標準的な治療法と、治療を選択する際の基準について解説します。

C0〜C1:予防処置と最小限の削除

C0の初期虫歯では、削る治療は行わず、フッ素塗布や適切な歯磨き指導によって再石灰化を促します。フッ素は歯の表面に「フルオロアパタイト」という、酸に溶けにくい結晶構造を形成し、虫歯の進行を抑制します。また、フッ素には細菌の酸産生を抑制する効果もあります。

市販の歯磨き粉に含まれるフッ素濃度は1000〜1500ppm程度ですが、歯科医院で使用する高濃度フッ素は9000ppmと約6〜9倍の濃度があり、より高い予防効果が期待できます。定期的なフッ素塗布と、食生活の改善、適切なブラッシングによって、C0の段階であれば進行を止めることが可能です

C1の段階では、虫歯の範囲や位置によって治療方針が変わります。前歯の見える部分や、進行が速いと判断される場合は、虫歯の部分だけを最小限削り、「コンポジットレジン」という歯科用プラスチックで修復します。コンポジットレジンは歯の色に近い色調があり、1回の治療で完了できるという利点があります。

一方、奥歯の噛む面の溝にできた小さな虫歯で、進行が遅いと予想される場合は、「シーラント」という予防的処置で対応することもあります。シーラントは溝を樹脂で埋めることで、プラークが溜まりにくくし、虫歯の進行を防ぎます

C2:充填治療と修復方法の選択

C2の段階では、虫歯の部分を削除し、詰め物で修復する治療が必要になります。修復方法の選択は、虫歯の大きさ、位置、患者さんの希望などによって決まります

虫歯が小さく、歯と歯の間に及んでいない場合は、コンポジットレジンによる直接充填が第一選択となります。この方法では、虫歯を削った後、すぐにレジンを詰めて光で固めます。治療が1回で終わり、削る量も最小限で済むという利点があります。ただし、レジンは長期的には着色したり、すり減ったりする可能性があります。

虫歯が歯と歯の間に及んでいる場合や、範囲が大きい場合は、「インレー」という詰め物を作製します。歯を削った後に型を取り、次回の来院時に完成した詰め物をセメントで接着します。インレーの材料には、金属(金合金やパラジウム合金)、セラミック、ハイブリッドセラミック(セラミックとレジンの混合)などがあります。

金属インレーは強度が高く、長期的な耐久性に優れていますが、見た目が目立つという欠点があります。セラミックインレーは審美性に優れ、変色や摩耗に強いですが、費用が高く、割れるリスクがあります。それぞれの材料の特性を理解し、患者さんの価値観に合った選択をすることが重要です。

C3:根管治療と歯の保存

C3の段階では、根管治療が必要になります。これは感染した歯髄を除去し、根管内を清掃・消毒して封鎖する治療で、一般的に「神経を取る治療」として知られています。

根管治療の詳細については別のコラムで解説していますが、この治療の成否は歯の長期的な予後に大きく影響します。根管治療後の歯は、歯髄を失うことで栄養供給が途絶え、もろくなります。そのため、治療後は被せ物(クラウン)で歯全体を覆い、補強することが推奨されます。

当院ではマイクロスコープを完備しており、根管内を拡大視野下で確認しながら、精密な根管治療を行うことができます。これにより、複雑な根管の構造も正確に把握でき、治療の成功率を高めることができます。

C4:抜歯と欠損補綴

C4の段階では、多くの場合抜歯が必要になります。残根状態の歯は感染源となり、周囲の骨や隣接する歯にも悪影響を及ぼすためです。ただし、根の状態が良好で、根の長さが十分にある場合は、根管治療を行った上で「ポスト」という土台を立てて被せ物を作ることで、歯を保存できる可能性もあります。

抜歯後は、失った歯の機能を回復するために、インプラント、ブリッジ、入れ歯のいずれかの方法で補う必要があります。インプラントは隣接する歯を削る必要がなく、自然な噛み心地が得られますが、外科手術が必要で、治療期間と費用がかかります。ブリッジは両隣の歯を削って支えとする固定式の修復で、違和感が少ないですが、健康な歯を削る必要があります。入れ歯は取り外し式で、費用も比較的抑えられますが、違和感や噛む力の低下があります。

虫歯リスクの評価と
個別化された予防戦略

虫歯リスクの評価と個別化された予防戦略

虫歯のなりやすさには個人差があり、その人のリスクに応じた予防戦略を立てることが重要です。

唾液検査による科学的リスク評価

虫歯のリスクを科学的に評価する方法として「唾液検査」があります。唾液検査では、唾液の分泌量、緩衝能(酸を中和する能力)、虫歯菌の数などを測定します。

唾液の分泌量が少ないと、口の中の自浄作用が低下し、虫歯のリスクが高まります。唾液の緩衝能が低いと、食事後の口腔内pHが中性に戻るまでの時間が長くなり、歯の脱灰が進みやすくなります。ミュータンス菌やラクトバチラス菌の数が多いと、当然虫歯のリスクは高くなります。

これらの情報を総合的に評価することで、その人の虫歯リスクレベルを判定し、リスクに応じた予防プログラムを提案できます。例えば、高リスクの方には、より頻繁な定期検診やフッ素塗布、キシリトール製品の使用、食生活の改善などを提案します。

食生活と虫歯の関係

虫歯の予防には、食事の内容だけでなく、食べ方も重要です。虫歯菌は糖質を代謝して酸を産生しますが、問題は糖質の総量よりも「摂取頻度」です。

食事やおやつを食べるたびに口の中のpHは低下しますが、通常は30〜40分程度で唾液の働きによって中性に戻ります。しかし、間食が多く、常に口の中に食べ物がある状態では、pHが低い状態が続き、虫歯のリスクが高まります。これを「ダラダラ食べ」と呼びます。

理想的には、食事と間食の回数を1日5回以内に抑え、食べる時間を決めることが推奨されます。また、食後すぐに歯磨きができない状況では、水で口をすすぐだけでも一定の効果があります。キシリトールガムを噛むことで、唾液分泌を促進し、口腔内pHの回復を早めることもできます。

定期検診による早期発見の重要性

虫歯は初期段階では自覚症状がないため、定期検診によって早期に発見することが重要です。C0やC1の段階で発見できれば、最小限の治療で済み、歯へのダメージも少なく抑えられます。

当院では予防歯科を重視しており、定期検診では虫歯のチェックだけでなく、歯周病の検査、歯磨き指導、専門的クリーニング、フッ素塗布などを総合的に行います。また、歯科用CTを完備しているため、レントゲンでは分かりにくい歯と歯の間の虫歯や、被せ物の下の虫歯なども早期に発見できます。

虫歯は一度進行すると自然には治りません。しかし、適切な予防と早期発見・早期治療によって、歯を長期的に守ることができます。「痛くなってから歯医者に行く」のではなく、「痛くならないために歯医者に行く」という予防的な意識を持つことが、将来的な歯の健康につながります。

よくある質問

Q.虫歯は自然に治ることはありますか?

C0の初期虫歯であれば、適切なケアによって再石灰化が起こり、進行を止めたり、一部修復されたりすることがあります。しかし、C1以降の段階で、すでに歯に穴が開いている虫歯は自然に治ることはありません。虫歯の部分には細菌が入り込んでおり、歯磨きだけでは除去できないためです。一度削られたエナメル質や象牙質は再生しないため、治療によって人工的に修復する必要があります。

ただし、進行が非常に遅い虫歯の場合、定期的な観察を続けながら経過を見ることもあります。重要なのは、自己判断せず、歯科医師の診断を受けることです。

Q.虫歯の治療は痛いですか?

現代の歯科治療では、麻酔技術の進歩により、治療中の痛みはほとんど感じないようにできます。C1やC2の段階であれば、虫歯を削る際に麻酔が不要な場合も多くあります。麻酔が必要な場合でも、表面麻酔を使用してから注射することで、針を刺す時の痛みも軽減できます。

また、電動注射器を使用することで、麻酔液を注入する際の圧力を一定に保ち、痛みを少なくすることができます。治療後に麻酔が切れてから多少の痛みや知覚過敏が生じることはありますが、通常は数日で落ち着きます。痛みへの不安が強い方は、事前に歯科医師に相談してください。

Q.詰め物や被せ物の下に虫歯ができることはありますか?

はい、詰め物や被せ物の下に虫歯ができることは珍しくありません。これを「二次う蝕」と呼びます。詰め物と歯の境目に微細な隙間ができると、そこから細菌が侵入し、内部で虫歯が進行します。

特に金属の詰め物は、経年的に金属が劣化したり、セメントが溶け出したりして隙間ができやすくなります。二次う蝕は外から見えにくく、自覚症状が出にくいため、定期検診でのレントゲン検査が重要です。予防のためには、詰め物の周囲を特に丁寧に磨くこと、定期的にメンテナンスを受けることが推奨されます。

Q.虫歯になりやすい人となりにくい人の違いは何ですか?

虫歯のなりやすさには、遺伝的要因と環境的要因の両方が関わっています。遺伝的には、唾液の性質(分泌量や緩衝能)、歯の質(エナメル質の結晶構造)、歯並びなどが影響します。環境的要因としては、食生活(特に糖質の摂取頻度)、口腔衛生習慣(ブラッシングの質と頻度)、フッ素の使用状況、定期検診の受診状況などが挙げられます。

また、幼少期にミュータンス菌に感染した時期や量も影響します。虫歯菌は主に母子感染するため、母親の口腔衛生状態が子どもの虫歯リスクに影響することもあります。自分の虫歯リスクを知るには、唾液検査を受けることをお勧めします。

Q.虫歯を放置するとどうなりますか?

虫歯を放置すると、確実に進行します。C1やC2の段階で放置すると、数ヶ月から数年でC3やC4に進行し、激しい痛みや腫れが生じます。最終的には歯を失うことになり、その場合、隣接する歯が移動したり、噛み合わせが変化したりして、口腔全体に影響が広がります。また、虫歯菌が血流に入り込むと、心臓や腎臓などの全身疾患のリスクも高まることが報告されています。

特に根の先端に膿が溜まった状態を放置すると、顎の骨が溶けたり、顔が腫れたりする「歯性感染症」という状態になり、まれに重篤な合併症を引き起こすこともあります。虫歯は決して放置せず、早めに治療を受けてください。

この記事を監修した人

埼玉志木駅前歯医者・矯正歯科 コスモクリニック院長 川村 英史

埼玉志木駅前歯医者・矯正歯科
コスモクリニック 院長

院長の川村は、一般歯科からインプラントなどの専門的な治療まで幅広く診療を行い、地域の皆様の口腔健康をサポートしています。東北大学を卒業後、日本最大のクリニックで臨床経験を積み、2016年に志木駅前歯医者コスモクリニックを開院。患者様一人ひとりに寄り添い、丁寧な説明と安心できる治療を心がけています。インプラント寺子屋2022での講演や、WHITE CROSSでの「インプラント治療におけるデジタルとアナログの融合」など講演活動にも積極的に取り組み、著書「最強の臨床術」も執筆。予防歯科を重視した質の高い歯科医療の提供を通じて、地域に貢献する医療を提供できるよう努めております。

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