2026.02.17

噛み合わせの異常が引き起こす全身症状と治療法

「原因不明の頭痛や肩こりに悩んでいる」「顎が痛い、カクカク音がする」といった症状はありませんか?実は、これらの症状の原因が「噛み合わせの異常」にある可能性があります。噛み合わせは口の中だけの問題ではなく、全身の健康に深く関わっています。

この記事では、噛み合わせの異常がどのように全身に影響するのか、そして適切な治療法について、歯科医師の視点から詳しく解説します。

正常な噛み合わせとは何か

正常な噛み合わせとは何か

噛み合わせは、専門用語で「咬合」と呼ばれ、上下の歯が接触する関係性を指します。正常な噛み合わせには、いくつかの条件があります。

理想的な噛み合わせの条件

正常な噛み合わせでは、上顎の歯が下顎の歯を2〜3mm程度覆い、上下の歯がバランスよく接触します。前歯では、上の前歯が下の前歯の前方に位置し、下の前歯の3分の1程度を覆います。これを「オーバーバイト」と呼びます。また、上の前歯は下の前歯よりも2〜3mm前方に位置します。これを「オーバージェット」と呼びます。

奥歯では、上顎の歯が下顎の歯よりも半歯分(約3〜4mm)外側に位置し、上下の奥歯の山と谷が適切に噛み合います。これにより、食べ物を効率的にすりつぶすことができます。

また、下顎の位置も重要です。下顎は、「顎関節」という関節によって頭蓋骨に接続されています。正常な噛み合わせでは、下顎が最も安定する位置(中心位)で噛んだ時に、歯が適切に接触します。この位置がずれていると、顎関節や筋肉に過度な負担がかかります。

噛み合わせの異常の種類

噛み合わせの異常には、いくつかのタイプがあります。「上顎前突」は、上の前歯が過度に前に出ている状態で、いわゆる「出っ歯」です。「下顎前突」は、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態で、「受け口」とも呼ばれます。

「開咬」は、奥歯を噛んでも前歯が噛み合わない状態です。「過蓋咬合」は、上の前歯が下の前歯を過度に覆い、下の前歯がほとんど見えない状態です。「交叉咬合」は、奥歯の上下の位置関係が逆になっている状態です。

これらの異常に加えて、歯の欠損、不適合な詰め物や被せ物、歯ぎしりや食いしばりなどの習癖も、噛み合わせに影響を与えます。

噛み合わせと顎関節・筋肉の関係

噛み合わせは、顎関節と咀嚼筋(噛む筋肉)と密接に関連しています。噛み合わせが正常であれば、顎関節への負担は均等に分散され、筋肉も効率的に働きます。

しかし、噛み合わせが異常な場合、下顎は無意識のうちに顎関節や筋肉に負担をかけながら、歯が接触する位置を探します。この状態が続くと、顎関節の「関節円板」というクッションの役割をする組織がずれたり、変形したりします。また、咀嚼筋が持続的に緊張した状態になり、筋肉の疲労や痛みが生じます。

このような状態を「顎関節症」と呼びます。顎関節症の症状には、顎の痛み、関節音(カクカク、ゴリゴリという音)、開口障害(口が大きく開けられない)などがあります。

噛み合わせの異常が引き起こす全身症状

噛み合わせの異常が引き起こす全身症状

噛み合わせの異常は、口の周囲だけでなく、全身に様々な影響を及ぼします。

頭痛と顔面痛

噛み合わせの異常による最も一般的な症状の一つが頭痛です。特に「緊張型頭痛」と呼ばれるタイプの頭痛は、噛み合わせと深く関連しています

噛み合わせが悪いと、咀嚼筋が過度に緊張します。主な咀嚼筋である「咬筋」「側頭筋」「内側翼突筋」「外側翼突筋」は、頭部や顔面の筋肉と連動しています。特に側頭筋は、頭の側面から顎に向かって走行しており、この筋肉が緊張すると、こめかみの部分に痛みが生じます。

また、咀嚼筋の緊張は、頭部の筋膜を介して後頭部や首の筋肉にも影響を与えます。このような筋肉の連鎖的な緊張によって、頭全体を締め付けられるような頭痛が生じます。

さらに、上顎の奥歯の噛み合わせが高すぎる場合、「三叉神経」という顔面の知覚を司る神経が刺激され、顔面痛や神経痛様の痛みが生じることもあります。

肩こりと首の痛み

噛み合わせの異常は、肩こりや首の痛みの原因にもなります。これは、下顎の位置が頭部全体のバランスに影響を与えるためです。

人間の頭部は約5kgの重さがあり、首の骨(頸椎)と筋肉によって支えられています。下顎の位置がずれると、頭部のバランスを保つために、首や肩の筋肉が補正的に働きます。特に、噛み合わせが低い場合や、片側だけで噛む習慣がある場合、頭部が前方や側方に傾き、首や肩の筋肉に持続的な負担がかかります。

また、咀嚼筋と首の筋肉は「筋膜」という膜でつながっており、咀嚼筋の緊張が首の筋肉の緊張を引き起こします。特に「胸鎖乳突筋」という首の前側の筋肉は、下顎の動きと連動しており、噛み合わせの異常によって緊張しやすくなります。

慢性的な肩こりや首の痛みで、マッサージや整体に通っても改善しない場合、噛み合わせの問題が隠れている可能性があります。

めまいと耳鳴り

噛み合わせの異常が、めまいや耳鳴りを引き起こすこともあります。これは、顎関節と耳が解剖学的に非常に近い位置にあるためです。

顎関節と中耳(音を伝える部分)の間には、わずか数mmの骨しかありません。顎関節に異常があると、関節の炎症や関節円板のずれによって、中耳の働きに影響を与える可能性があります。また、顎関節周囲の血流が悪化することで、内耳(平衡感覚を司る部分)への血流も減少し、めまいが生じることがあります。

さらに、咀嚼筋の過度な緊張は、耳管(中耳と鼻の奥をつなぐ管)の開閉に関わる筋肉にも影響を与え、耳閉感(耳が詰まった感じ)を引き起こすこともあります。これらの症状で耳鼻咽喉科を受診しても異常が見つからない場合、噛み合わせの問題を疑う必要があります。

姿勢の悪化と腰痛

噛み合わせは、全身の姿勢にも影響します。下顎の位置が頭部のバランスに影響し、それが脊椎全体のバランスに波及するためです。

噛み合わせが悪い場合、頭部が前方に傾く「頭部前方位」という姿勢になりやすくなります。この姿勢では、背中が丸まり、骨盤が後傾します。このような姿勢の変化は、腰椎(腰の骨)に過度な負担をかけ、腰痛の原因となります。

また、片側だけで噛む習慣がある場合、体全体が左右非対称になり、脊柱側弯(背骨が曲がる)や骨盤の傾きを引き起こすこともあります。これらの姿勢の異常は、慢性的な腰痛や背中の痛みにつながります。

研究によると、噛み合わせを改善することで、姿勢が改善し、腰痛が軽減したという報告もあります。ただし、すべての腰痛が噛み合わせに起因するわけではなく、他の原因も考慮する必要があります。

噛み合わせの検査と診断

噛み合わせの検査と診断

噛み合わせの問題を適切に治療するためには、まず正確な診断が必要です。

視診と触診による評価

歯科医院での噛み合わせの検査は、まず視診と触診から始まります。歯並びの状態、歯の摩耗の程度、顎の動きの範囲、顎関節の触診(痛みや関節音の有無)、咀嚼筋の触診(圧痛の有無)などを確認します

また、咬合紙という薄い色のついた紙を噛んでもらい、歯の接触状態を確認します。正常であれば、多くの歯が均等に接触しますが、異常がある場合は、特定の歯だけが強く接触したり、接触しない歯があったりします。

さらに、下顎を前方や側方に動かした時の歯の接触状態も重要です。これを「顎運動の検査」と呼び、咀嚼時の噛み合わせを評価します。

画像検査による詳細な評価

レントゲン検査では、顎の骨の形態、顎関節の状態、歯の位置関係などを評価します。パノラマレントゲンでは、口腔全体の概観を把握でき、セファロレントゲン(側面からの頭部全体のレントゲン)では、上下顎の骨格的な位置関係を分析できます。

より詳細な評価が必要な場合は、歯科用CTを使用します。CTでは、顎関節の骨の形態、関節円板の位置(MRI機能がある場合)、顎の骨の立体的な形態などを三次元的に評価できます。

当院では歯科用CTを完備しており、噛み合わせの問題の根本原因を精密に診断できます。特に顎関節症が疑われる場合や、複雑な噛み合わせの問題がある場合は、CT検査が有用です。

咬合器を用いた分析

より精密な噛み合わせの分析には、「咬合器」という機械を使用します。咬合器は、患者さんの顎の動きを再現する装置で、口腔内の型を取って作製した模型を装着します。

咬合器上で、歯の接触状態、顎の動きの軌跡、理想的な噛み合わせの位置などを詳細に分析できます。これにより、治療のゴールを明確にし、精密な治療計画を立てることができます。

噛み合わせの治療法

噛み合わせの治療法

噛み合わせの治療法は、原因と重症度によって異なります。

保存的治療

軽度から中等度の噛み合わせの問題や顎関節症では、まず保存的治療から始めます

「スプリント療法」は、最も一般的な治療法です。スプリントとは、マウスピース型の装置で、通常は上顎に装着します。スプリントを装着することで、顎を理想的な位置に誘導し、顎関節や筋肉への負担を軽減します。また、歯ぎしりや食いしばりから歯を守る役割もあります。

スプリントにはいくつかの種類があります。「スタビライゼーションスプリント」は、下顎を安定した位置に保つタイプで、顎関節症の治療に最も一般的に使用されます。「リポジショニングスプリント」は、下顎を前方に誘導するタイプで、関節円板のずれを改善する目的で使用されます。

スプリント療法に加えて、理学療法も有効です。温熱療法、マッサージ、ストレッチなどによって、筋肉の緊張を緩和します。また、生活習慣の改善も重要で、硬い食べ物を避ける、大きく口を開けない、頬杖をつかない、うつ伏せ寝をしないなどの注意が必要です。

歯科治療による咬合調整

不適合な詰め物や被せ物が原因で噛み合わせが悪い場合は、これらを作り直すことで改善できます。また、歯が欠損している場合は、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどで補うことで、噛み合わせのバランスを回復させます

「咬合調整」という処置では、高すぎる部分をわずかに削って、噛み合わせを整えます。ただし、削りすぎると歯が弱くなったり、知覚過敏が生じたりするため、慎重な調整が必要です。

歯ぎしりや食いしばりによって歯が過度に摩耗している場合は、被せ物で噛み合わせの高さを回復させることもあります。

矯正治療

歯並びの異常が噛み合わせの問題の根本原因である場合は、矯正治療が必要になります。矯正治療によって、歯を理想的な位置に移動させ、正常な噛み合わせを獲得します。

成人の矯正治療では、ワイヤー矯正やインビザラインなどの方法があります。当院ではインビザライン矯正にも対応しており、目立たない方法で噛み合わせを改善できます。

重度の骨格的な問題がある場合は、外科的矯正治療(顎の骨を切る手術と矯正治療の組み合わせ)が必要になることもあります。

集学的アプローチの重要性

噛み合わせの問題、特に顎関節症では、歯科治療だけでなく、他の専門家との連携が重要です。慢性的な痛みにはペインクリニック(痛みの専門医)の介入が、ストレスが大きく関与している場合は心理カウンセリングが、姿勢の問題が関与している場合は理学療法士やカイロプラクターとの連携が有効です。

当院では、総合歯科として幅広い治療に対応し、必要に応じて他の医療機関とも連携しながら、患者さんにとって最善の治療を提供しています。予防歯科を重視する当院の方針として、噛み合わせの問題を早期に発見し、症状が悪化する前に対処することを心がけています。

よくある質問

Q.噛み合わせの治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

噛み合わせの治療期間は、原因と治療法によって大きく異なります。スプリント療法による保存的治療の場合、症状の改善には数週間から数ヶ月かかることが一般的です。スプリントは通常、夜間装着を3〜6ヶ月程度継続します。咬合調整や詰め物・被せ物の作り直しであれば、数回の通院で完了することもあります。

一方、矯正治療が必要な場合は、1〜3年程度の期間が必要です。重要なのは、噛み合わせの治療は長期的な視点で取り組む必要があるということです。症状が改善しても、再発予防のための定期的なメンテナンスが推奨されます。

Q.噛み合わせの異常は自然に治ることはありますか?

軽度の顎関節症であれば、生活習慣の改善や自然治癒力によって症状が改善することもあります。しかし、歯並びの異常や骨格的な問題による噛み合わせの異常は、自然に治ることはありません。むしろ、放置すると年齢とともに悪化する傾向があります。

また、症状が一時的に消失しても、根本原因が解決していなければ再発する可能性が高いです。噛み合わせの問題を疑う症状がある場合は、早めに歯科医院を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

Q.歯ぎしりと噛み合わせの関係は?

歯ぎしりと噛み合わせは、相互に影響し合う関係にあります。噛み合わせの異常があると、無意識のうちに理想的な噛み合わせの位置を探そうとして、歯ぎしりや食いしばりが生じやすくなります。一方、長期間の歯ぎしりによって歯が摩耗すると、噛み合わせの高さが低くなり、噛み合わせがさらに悪化するという悪循環に陥ります。

また、歯ぎしりは顎関節や咀嚼筋に過度な負担をかけ、顎関節症の原因となります。歯ぎしりの治療には、スプリントの使用が効果的で、歯を保護しながら顎関節や筋肉への負担を軽減できます。ストレス管理も歯ぎしりの軽減には重要です。

Q.噛み合わせの治療で痛みはありますか?

多くの噛み合わせの治療は、痛みを伴わないか、軽度の不快感程度です。スプリント療法では、装着初期に違和感がありますが、痛みはほとんどありません。咬合調整で歯を削る場合も、削る量はわずかなため、通常は麻酔なしで行えます。詰め物や被せ物の作り直しでは、歯を削る際に麻酔を使用するため、処置中の痛みはありません。

矯正治療では、歯を動かす際に数日間の痛みや違和感がありますが、耐えられないほどの痛みではありません。むしろ、噛み合わせの治療によって、慢性的な頭痛や顎の痛みが軽減されることが多く、生活の質が向上します。

Q.子どもの噛み合わせはいつ頃チェックすべきですか?

子どもの噛み合わせは、乳歯が生え揃う3歳頃から定期的にチェックすることが推奨されます。この時期に反対咬合(受け口)や開咬などの異常が見つかった場合、早期に介入することで、より簡単に改善できることがあります。特に骨格的な問題が疑われる場合は、成長期に顎の成長をコントロールする治療が有効です。永久歯への生え変わりが始まる6〜7歳頃も、重要なチェックポイントです。

この時期に歯並びや噛み合わせの問題が見つかった場合、小児矯正(一期治療)を検討します。当院では小児歯科と小児矯正の両方に対応しており、お子さんの成長に合わせた適切な時期に介入することで、将来的な大きな問題を予防できます。

この記事を監修した人

埼玉志木駅前歯医者・矯正歯科 コスモクリニック院長 川村 英史

埼玉志木駅前歯医者・矯正歯科
コスモクリニック 院長

院長の川村は、一般歯科からインプラントなどの専門的な治療まで幅広く診療を行い、地域の皆様の口腔健康をサポートしています。東北大学を卒業後、日本最大のクリニックで臨床経験を積み、2016年に志木駅前歯医者コスモクリニックを開院。患者様一人ひとりに寄り添い、丁寧な説明と安心できる治療を心がけています。インプラント寺子屋2022での講演や、WHITE CROSSでの「インプラント治療におけるデジタルとアナログの融合」など講演活動にも積極的に取り組み、著書「最強の臨床術」も執筆。予防歯科を重視した質の高い歯科医療の提供を通じて、地域に貢献する医療を提供できるよう努めております。

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