従来の二次元レントゲン写真では、歯根の先端の病変の正確な大きさや位置、隣接する解剖学的構造との関係を把握することが難しい場合があります。
歯科用CTを用いれば、三次元的に病変の範囲、根管の形態、上顎洞や下歯槽神経との距離などを詳細に評価できます。
「以前に神経を取って治療した歯が、また痛み出した」「歯茎にニキビのような膨らみができた」という経験はありませんか。
一度根管治療を終えた歯であっても、時間の経過とともに再び問題が生じることがあります。このような状態に対しては、「再根管治療」または「歯根端切除術」と呼ばれる外科的歯内療法が選択肢となります。
この記事では、神経を取った歯が再び問題を起こすメカニズムと、それぞれの治療法がどのような基準で選択されるのかについて、歯科医師の視点から詳しく解説します。

根管治療は、歯の内部に存在する歯髄(神経や血管などを含む組織)を除去し、根管内を清掃・消毒した上で緊密に封鎖する治療です。しかし、いくつかの理由により、治療後に再感染が起こることがあります。
歯の根管は、教科書に描かれているような単純な管状構造ではありません。
主根管から枝分かれする「側枝」や、根の先端で複雑に分岐する「根尖分岐」、隣接する根管同士をつなぐ「根管峡部」など、極めて複雑な三次元構造を持っています。
これらの細部にまで器具や薬剤を到達させることは技術的に難しく、感染した組織や細菌が残存することがあります。
残った細菌は徐々に増殖し、数ヶ月から数年後に再感染として症状が現れます。特に、過去に肉眼下で行われた根管治療では、根管の見落としや清掃不足が起こりやすい傾向にあります。
根管充填が緊密に行われたとしても、被せ物や詰め物の縁から細菌が再侵入する経路があります。
これを「コロナルリーケージ」と呼びます。仮の蓋のまま長期間放置された場合や、被せ物の適合が悪く境目に隙間がある場合、唾液中の細菌が根管内に到達し、再感染を引き起こします。
研究によると、仮封のまま3週間以上放置されると、唾液が根管全長まで漏洩することが報告されています。
上顎の第一大臼歯には、頬側の根に「第二近心頬側根管(MB2)」と呼ばれる第4の根管が存在することが多く、その出現頻度は60〜95%と報告されています。この根管は非常に細く発見しづらいため、見落とされたまま治療が終了し、後に再感染源となるケースがあります。
下顎の前歯にも約40%の確率で2本の根管が存在し、舌側の根管が見逃されることがあります。これらの解剖学的バリエーションを把握し、すべての根管を確実に治療することが、再発防止の鍵となります。

再根管治療は、初回の根管治療よりも難易度が高い処置です。
再根管治療では、まず以前に詰められていた根管充填材を除去する必要があります。
一般的にはガッタパーチャと呼ばれるゴム状の材料が使われていますが、これを完全に除去することは容易ではありません。専用の溶剤や超音波器具を用いて慎重に取り除いていきます。
問題となるのは、過去の治療で破折したファイル(細い針状の器具)が根管内に残っているケースや、根管に穿孔(穴)が開いているケースです。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用すれば、3〜20倍の拡大視野下で破折器具の除去や穿孔修復が可能になり、肉眼では困難だった処置が現実的な選択肢となります。
充填材を除去した後、根管内を再度清掃・消毒します。初回治療で根管がすでに広げられている分、清掃すべき範囲が広く、感染の程度も進行していることが多いため、より入念な処置が必要です。
根管内の細菌は、根管壁に強固に付着する「バイオフィルム」を形成しており、薬剤に対する抵抗性が高い状態にあります。このバイオフィルムを物理的に破壊しながら、次亜塩素酸ナトリウムなどの強力な消毒薬で繰り返し洗浄することで、再感染を制御します。
再根管治療の成功率は、初回治療と比べて低く、文献的には60〜80%程度と報告されています。

再根管治療を行っても症状が改善しない場合、または再根管治療自体が適応外となる場合には、外科的歯内療法が選択されます。
以下のような状況では、根管側からの治療(歯冠からのアプローチ)が困難または不可能となります。
歯の上に被せ物だけでなく支台築造(コア)や歯根に固定された土台がある場合、これらを除去すると歯が破折するリスクが高まります。
また、歯根の先端付近に大きな膿瘍や嚢胞が形成されている場合、根管側からの薬剤だけでは病変まで到達せず、症状が改善しないことがあります。
さらに、根管が著しく湾曲していたり、過去の治療で器具が破折して取り除けなかったりする場合も、外科的アプローチが現実的な選択となります。
歯根端切除術では、まず歯の根の先端付近の歯茎を切開し、骨を一部削って歯根の先端を露出させます。
次に感染している根の先端を約3mm切除し、切除断面を観察して側枝や副根管の有無を確認します。最後に、根管の先端側から専用の器具で逆方向に充填材(MTAなど)を詰め、歯茎を縫合します。
近年では、マイクロスコープを併用した「マイクロサージェリー」と呼ばれる手法が普及し、文献的には成功率が90%以上と報告されています。
外科的なアクセスが困難な部位、たとえば下顎の奥歯では、歯根端切除術の代わりに「意図的再植術」が選択されることがあります。
これは、対象の歯を一度抜歯し、口の外で歯根の先端を処置した後、元の位置に戻すという方法です。
短時間で口腔外に取り出す必要があるため難易度は高いですが、適応症例では有効な治療法です。
再根管治療と外科的歯内療法のどちらを選択するかは、複数の要素を総合的に評価して決定されます。
従来の二次元レントゲン写真では、歯根の先端の病変の正確な大きさや位置、隣接する解剖学的構造との関係を把握することが難しい場合があります。
歯科用CTを用いれば、三次元的に病変の範囲、根管の形態、上顎洞や下歯槽神経との距離などを詳細に評価できます。
当院では歯科用CTを完備しており、再治療の適応判断や手術の安全性評価に活用しています。
また、マイクロスコープを使用することで、根管内の微細な構造や見落とされた根管、亀裂の有無などを確認しながら、より精密な治療を行うことが可能です。
すべての歯が保存できるわけではありません。
歯根が縦に割れている「歯根破折」、歯を支える骨が大きく失われている、保存しても機能的に長く使えないと予想される、といった状況では、抜歯を選択し、インプラントやブリッジ、入れ歯などで失った機能を回復させることが現実的です。
無理に歯を残そうとして治療を繰り返すよりも、適切なタイミングで抜歯を判断することが、結果として患者様の口腔全体の健康を守ることにつながる場合もあります。

外科的歯内療法を含む再治療が成功した後も、その歯を長く使い続けるためにはいくつかの注意点があります。治療後は速やかに適切な被せ物で歯全体を覆い、コロナルリーケージを防ぐことが重要です。
神経を失った歯は栄養供給が途絶えてもろくなっているため、歯ぎしりや食いしばりがある方ではナイトガード(マウスピース)による保護が推奨されます。
定期検診では、レントゲンで根の先端の骨の状態を確認し、再発の兆候がないかをチェックします。当院は予防歯科を軸とした総合歯科として、治療後の長期管理にも力を入れており、再治療となった歯を含めた口腔全体の健康維持をサポートしています。
A.基本的な治療の流れは似ていますが、再根管治療では以前の充填材の除去という追加工程が必要です。
初回治療と比べて根管がすでに広げられていること、感染が長期化していること、歯質が薄くなっていることなどから難易度が高く、成功率もやや低くなります。マイクロスコープによる拡大視野や超音波器具を併用することで、再根管治療の精度を高めることが可能です。
A.根管側からの再治療が困難または不可能な場合に選択されます。
具体的には、根の先端に大きな嚢胞や膿瘍がある、土台や被せ物の除去で歯が破折するリスクが高い、根管内に除去できない破折器具がある、根管の湾曲が強く器具が到達できないといった状況です。
歯科用CTで病変の範囲を確認した上で、最も成功率の高いアプローチを選択します。
A.手術直後から1〜2日間が腫れと痛みのピークで、その後3〜7日かけて徐々に軽減します。処方される鎮痛剤でコントロール可能な範囲の痛みであることがほとんどです。
腫れを最小限に抑えるためには、術後48時間は冷却すること、激しい運動や飲酒・入浴を避けること、処方された抗生物質を指示通りに服用することが重要です。抜糸は通常1〜2週間後に行います。
A.再根管治療と外科的歯内療法の両方を試みても症状が改善しない場合や、歯根破折が判明した場合などは、抜歯が現実的な選択となります。
ただしその前に、歯科用CTでの再評価や専門医によるセカンドオピニオンを検討することもあります。
抜歯後はインプラント、ブリッジ、入れ歯のいずれかで機能を回復させますが、当院では総合歯科として、抜歯後の補綴治療まで一貫してご提案できます。
A.初回治療の質が、その後の予後を大きく左右します。マイクロスコープを使用した精密な根管治療を選択する、ラバーダム(口腔内を治療部位だけ露出させるシート)による無菌的環境での治療を行う歯科医院を選ぶ、根管治療後はできるだけ速やかに最終的な被せ物を装着する、定期検診を継続する、といったことが重要です。
再治療の難易度は初回治療より高くなるため、初回からしっかりと治療を受けることが、歯を長く残すための最善の選択です。
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