神経の治療を受けた日の夜から、ずきずきと痛む。噛むと響くような違和感がある。
根管治療の後、こうした症状で不安になり、連絡をくださる患者様は少なくありません。神経を取ったのになぜ痛むのか、と疑問に思われるのも当然です。
けれども、治療後の痛みの多くには理由があり、時間とともに落ち着いていくものです。
本記事では、根管治療後に痛みが出る原因と、続く期間の目安、受診を考えるべきサインについて解説いたします。
根管治療のあとに
痛みが出るのはなぜか

神経を取った歯は、もう痛みを感じないはず。そう考える方は多いのですが、実際には少し事情が異なります。まずは、痛みがどこから来ているのかを整理します。
痛みを感じているのは歯の周りの組織
根管治療では、歯の内部にある神経や血管を取り除きます。ですから、歯の中そのものが痛むわけではありません。
痛みを感じているのは、歯の根の周りにある組織です。
歯の根は、歯根膜によって骨とつながっています。
この歯根膜には、噛んだときの圧力を感じ取る感覚があります。
根管治療の刺激がこの部分に伝わると、噛むと痛い、浮いたような感じがする、といった症状として現れます。
神経を取っても痛みが出る理由は、ここにあります。
治療そのものが刺激になることがある
根管治療では、細い器具で管の中を清掃し、薬剤で洗浄と消毒を繰り返します。
管の先端は根の外につながっているため、処置の刺激や洗浄液、内部の細菌の一部が、根の先の組織に伝わることがあります。
これは治療の過程で起こり得る反応で、ある程度は避けられない面もあります。日本歯科保存学会でも、根管治療後に一時的な痛みが生じることがあると説明されています。
多くの場合、体の自然な回復とともに数日で落ち着いていきます。
「痛い=失敗」とは限らない
治療後に痛みが出ると、何か問題があったのではと心配になるものです。
ただ、痛みがあることと、治療がうまくいかなかったことは、必ずしも同じではありません。
むしろ、根の先に強い炎症があった歯ほど、処置の直後は反応が出やすい傾向があります。
見るべきなのは、痛みの程度とその続き方です。日ごとに軽くなっていくのか、変わらないのか、強くなっていくのか。この経過が、判断の手がかりになります。
痛みの3つの原因と
続く期間の目安

結論からお伝えすると、治療後の痛みの原因は大きく3つに分けられます。それぞれ続く期間の目安も異なるため、順に見ていきます。
根の先の組織の一時的な炎症
最も多いのが、処置の刺激による根の先の炎症です。
治療当日の夜から翌日にかけて痛みが強くなり、2〜3日をピークに、1週間ほどで落ち着いていくのが典型的な経過です。
噛んだときに響く、歯が浮いたような感じがする、といった症状が中心になります。
この場合、痛み止めでやわらげながら経過を見ることで、多くは自然に治まっていきます。感じ方には個人差があり、ほとんど痛まない方もいれば、数日しっかり痛む方もいます。
治療前から強い痛みや腫れがあった歯、根の先に大きな病変が見つかっていた歯では、この反応が出やすい傾向があります。
すでに炎症が起きている場所に処置を加えるため、一時的に症状が強まることがあるためです。事前にその可能性をお伝えしておくと、落ち着いて経過を見ていただけます。
かみ合わせの当たり
意外に多いのが、かみ合わせによる痛みです。
治療中の歯には仮のふたをしますが、これがわずかに高いと、噛むたびに歯が押され、根の周りに負担がかかります。
炎症が起きている時期に繰り返し押されれば、痛みは長引きやすくなります。
この場合は、かみ合わせを少し調整するだけで楽になることがあります。噛むと痛い状態が数日たっても変わらないときは、この原因を疑う価値があります。
治療後の歯は根の周りが敏感になっているため、普段なら気にならない程度のわずかな高さでも痛みとして感じやすくなります。
反対に、何もしなければ痛くないのに、噛んだ瞬間だけ響くという場合は、かみ合わせが関わっていることが多いものです。
感染の残存や見えにくい問題
注意したいのが、痛みが長引く場合です。次のようなときには、時間が経っても痛みが引かない、あるいは腫れを伴うことがあります。
- 管の形が複雑で細菌が残っている
- 見つけにくい細い管が隠れている
- 歯の根にひびが入っている
臨床の現場では、2週間以上痛みが続くケースで、あらためて検査をすると原因が見つかることがあります。
奥歯では、通常の本数に加えてもう1本、細い管が隠れていることもあり、そこに残った細菌が痛みの原因になっている場合があります。
こうした場合は、自然に治まるのを待つのではなく、原因に対する処置が必要になります。
歯の根にひびが入っている場合は、残念ながら歯を残すのが難しいと判断することもあります。
期間の目安
整理すると、1週間程度で日ごとに軽くなっていく痛みは、多くの場合心配いりません。
噛んだときだけ痛む状態が続くなら、かみ合わせの確認を。2週間を過ぎても変わらない、あるいは強くなる、腫れてきた場合は、早めの受診が必要です。
あくまで目安ですので、不安なときは期間にかかわらずご相談ください。
自宅でできる対処と
受診の目安

痛みがある間、日常でできることもあります。無理をせず、様子を見ながら過ごしていただければと思います。
痛みがある間の過ごし方
痛みが強いときは、処方された痛み止め、または普段使っている市販の痛み止めを用法どおりに使ってかまいません。我慢しすぎる必要はありません。
治療中の歯ではなるべく噛まないようにし、反対側で食事をとると負担を減らせます。
血流が良くなると痛みが増しやすいため、治療当日は長風呂や激しい運動、飲酒を控えるのが無難です。
頬の外から冷やすと楽になることもありますが、冷やしすぎはかえって治りを妨げることがあるため、軽く当てる程度にとどめます。
すぐに連絡したほうがよいサイン
次のような症状があるときは、次の予約を待たずに連絡してください。根の先で炎症が広がっている可能性があり、早めの対応が必要になります。
- 顔や歯茎が腫れてきた
- 熱が出た
- 夜も眠れないほど痛む
- 痛み止めが効かない
仮のふたが取れたとき
治療の間に詰めている仮のふたが、外れたり欠けたりすることがあります。
そのままにしておくと、唾液とともに細菌が入り込み、せっかく消毒した内部が再び汚染されてしまいます。
痛みがなくても、できるだけ早く連絡をいただければと思います。
受診までの間は、その歯で噛まないようにし、食べかすが入らないよう気をつけて過ごしてください。
根管治療の痛みに
当院が向き合う方法

起こり得る痛みを事前にお伝えする
当院では、根管治療を始める前に、治療後に痛みが出る可能性があることをお伝えしています。
何も知らずに痛みが出れば不安になりますが、あらかじめ知っていれば、落ち着いて経過を見ることができます。
どの程度の痛みなら様子を見てよいか、どうなったら連絡すべきか。その目安も共有しています。
痛みが続くときは原因を確かめる
痛みが長引く場合は、原因を確かめることから始めます。マイクロスコープで管の内部を拡大して確認し、必要に応じてCTで根の形やひびの有無、根の先の病変の広がりを立体的に調べます。
平面のレントゲンでは見えにくい問題も、こうした検査で見つかることがあります。
痛みの出方や治り方には個人差があり、必ずしも同じ経過をたどるとは限りません。
気になることがあれば、我慢せずにお伝えいただければと思います。
よくある質問
Q.治療後の痛み止めは飲んでも大丈夫ですか?
処方された痛み止め、または普段お使いの市販薬を、用法と用量を守って使っていただいてかまいません。痛みを我慢しすぎると、かえってつらい時間が長くなります。
持病があって服用中のお薬がある方や、薬で体調を崩した経験のある方は、事前にお知らせいただければ、合うものを検討します。
Q.治療中の歯で食事をしてもいいですか?
仮のふたをしている間は、なるべく反対側で噛むことをおすすめします。治療中の歯は内部が空洞に近く、強い力がかかると割れることがあるためです。
硬いもの、粘り気のあるものは、ふたが外れる原因にもなります。
最終的な被せ物が入るまでは、慎重に使っていただくのが安心です。
Q.治療の翌日に歯茎が腫れてきました。
根の先の炎症が強く出ている可能性があります。腫れが強い場合や、熱を伴う場合は、次の予約を待たずに連絡してください。
内部にたまった膿を出す処置や、抗菌薬の使用を検討することがあります。軽い腫れで日ごとに引いていくようであれば、経過を見ることもありますが、自己判断は避けていただくのがよいかと思います。
Q.治療が終わって数ヶ月後に痛み出しました。
時間が経ってからの痛みは、管の中に細菌が残っていた、被せ物の境目から再び細菌が入り込んだ、歯の根にひびが入った、といった原因が考えられます。
いずれも、自然に治まることはあまり期待できません。放置すると範囲が広がることもあるため、早めに受診して原因を確かめることをおすすめします。
根管治療後の痛みは、原因と経過の目安を知っておくことで、必要以上に不安にならずに済みます。気になることがあれば、遠慮なくご相談ください。