歯茎から血が出る、歯がぐらつく気がする、口臭が気になってきた。歯周病かもしれないと感じても、治療にどれくらい通うのか見当がつかず、足が遠のいてしまう患者様は少なくありません。
歯周病の治療は、症状を抑えて終わりではなく、いくつかの段階を踏んで進みます。先の見通しがわかれば、通院への不安は小さくなります。
本記事では、歯周病治療の基本的な流れと、進行度ごとの通院回数の目安について解説いたします。
歯周病治療は
なぜ段階を踏むのか

歯周病の治療は、一度で終わるものではありません。理由は、歯茎の奥に隠れた汚れを段階的に取り除き、その都度、改善を確かめながら進める必要があるからです。まずは、口の中で何が起きているのかから見ていきます。
歯周病とは何が起きている状態か
歯周病は、歯と歯茎の境目にたまった細菌によって、歯を支える組織が壊されていく病気です。
はじめは歯茎だけに炎症が起こる歯肉炎の段階ですが、進行すると、歯茎が下がり、歯を支える骨が溶け、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。日本歯周病学会でも、成人が歯を失う大きな原因の一つとして説明されています。
歯と歯茎の境目には、歯周ポケットと呼ばれる溝があります。健康な状態では浅いこの溝が、歯周病が進むと深くなり、その奥に細菌や歯石がたまっていきます。
歯石は、歯垢が硬くなったもので、歯ブラシでは取り除けません。さらに深い部分の歯石は、自分ではまったく手が届かない場所にあります。だからこそ、専門的な器具での除去が必要になるのです。
痛みが出にくいから見つけにくい
歯周病は、かなり進むまで強い痛みが出にくい病気です。そのため自覚しにくく、気づいたときには進行していることも珍しくありません。臨床の現場でも、別の治療で来院された患者様の検査で、思いがけず歯周病が見つかるケースをしばしば経験します。
出血、口臭、歯茎のむずがゆさ、朝起きたときの口のねばつき。こうした小さなサインは、見過ごされがちです。けれども、これらは歯茎からの大切な合図でもあります。早く気づくほど、少ない負担で対応しやすくなります。
歯周病治療の基本的な流れ

ここからが本題です。結論を先にお伝えすると、歯周病治療は「検査→歯石除去→再評価→メンテナンス」という流れが基本になります。それぞれの段階で何をするのかを見ていきます。
検査で現状を把握する
最初に行うのが検査です。歯周ポケットの深さを専用の器具で複数の箇所ごとに測り、レントゲンで骨がどれだけ残っているかを確認します。あわせて、出血の有無、歯のぐらつき、歯石の付き具合なども調べます。
この検査によって、どの歯がどの程度進んでいるのかが見えてきます。同じ口の中でも、進行の度合いは歯ごとに異なるものです。
だからこそ、全体をまとめてではなく、一本ずつ状態を把握することに意味があります。治療計画の出発点であり、ここを丁寧に行うかどうかが、その後を大きく左右します。
検査の結果は、数値やレントゲンの画像とともにお見せできることが多く、ご自身の口の中で何が起きているのかを目で確かめていただけます。
言葉で「進んでいます」と伝えられるよりも、数値や画像で見たほうが納得しやすく、治療への前向きな気持ちにもつながります。現状を正しく知ることが、最初の一歩です。
歯石を取り除く
次に、歯石や汚れを除去していきます。歯茎の上に付いた見える歯石を取るのがスケーリング、歯茎の奥深くに入り込んだ歯石を取り除くのがSRP(歯の根の表面を清掃する処置)です。
汚れの量や深さによって、口の中をいくつかの範囲に分け、何回かに分けて行うのが一般的です。
同時に進めたいのが、毎日のブラッシングの見直しです。どれだけ歯科で汚れを取っても、日々のケアが伴わなければ再びたまってしまいます。
治療は、歯科と患者様の二人三脚で進むもの。歯科での処置と自宅でのケアが噛み合ったとき、歯茎は目に見えて落ち着いていきます。
再評価とメンテナンス
歯石を取った後、あらためて検査を行い、歯茎がどれだけ改善したかを確認します。これが再評価です。歯周ポケットが浅くなり、出血が減っていれば、良い状態を保つための定期メンテナンスへ移ります。
一方、深いポケットが残る場合は、歯茎を開いて奥の汚れを取り除く外科的な処置を検討することもあります。再評価は、次にどう進むかを決めるための大切な区切りです。ここを飛ばしてしまうと、改善したのか、まだ炎症が残っているのかが判断できません。
改善が見られた部分はメンテナンスへ、まだ深さが残る部分は追加の対応へと、歯ごとに方針を分けていくこともあります。
進行度別の通院回数の目安

「結局、何回通うのか」は、多くの患者様が気にされる点です。回数は進行度によって変わります。あくまで目安としてお考えください。
軽度・中等度・重度での違い
軽度であれば、検査とクリーニングを合わせて2〜4回程度で落ち着くことが多いです。
中等度になると、歯石除去を範囲ごとに分けて行い、再評価もはさむため、5〜8回ほどかかることがあります。重度の場合は、外科的な処置や再評価を重ねることになり、それ以上の回数と期間が必要になることもあります。
これらはあくまで標準的な目安で、回数には個人差があり、必ずしも同じとは限りません。
歯石の付き方や歯茎の反応、全身の状態、毎日のケアの様子によっても変わります。最初に検査をしたうえで、おおよその見通しをお伝えできることが多いので、気になる場合は遠慮なくお尋ねください。
一度に一気に治療を進めるより、歯茎の反応を見ながら段階的に進めるほうが、結果として落ち着きやすいことも多いものです。回数が多いと聞くと負担に感じるかもしれませんが、一回あたりの時間は限られており、生活のなかに無理なく組み込める範囲で計画していきます。
治療後のメンテナンスが
最も大切

歯周病は、治療が終わっても再発しやすい病気です。せっかく改善しても、ケアを怠れば元に戻ってしまいます。私個人の見解としては、治療を途中でやめてしまうことが、最ももったいない結果につながると感じています。
良い状態になった後は、3〜4ヶ月に一度の定期的なケアで、その状態を保っていくことが目標になります。このメンテナンスを続けるかどうかが、歯を長く残せるかどうかの分かれ目です。
治療のゴールは「痛みが消えること」ではなく「良い状態を保ち続けること」だとお考えいただくとよいかと思います。
当院での対応

当院では、まず検査で現状を丁寧にお伝えし、どの段階でどれくらい通うのか、見通しを共有することから始めます。完全個室のカウンセリングルームで、ご不安な点や生活習慣のことも相談しやすい環境を整えています。
治療の途中では、改善の様子を一緒に確認しながら進めます。歯周ポケットの数値や出血の有無が良くなっていくのが分かると、ケアへの意欲も続きやすくなるからです。歯周病の進み方や改善の度合いには個人差があります。
自己判断で通院をやめず、再評価とメンテナンスまで続けていただくことが、歯を長く守ることにつながると考えています。
よくある質問
Q.歯石取りだけで歯周病は治りますか?
軽度であれば、歯石除去と毎日のセルフケアの改善で落ち着くことが多いです。ただし、進行している場合は歯茎の奥の処置や再評価が必要になります。
一度の歯石取りで完了とは限らない、とお考えいただくとよいかと思います。表面の歯石だけ取って終わりにすると、奥に残った汚れから再び進んでしまうことがあります。大切なのは、深い部分まで段階的に対応していくことです。
Q.治療は痛いですか?
歯茎の状態によっては、処置の際に違和感や軽い痛みを覚えることがあります。特に歯茎の奥深くの歯石を取るSRPでは、必要に応じて麻酔を用いることもあります。
痛みが心配な場合は、事前にお伝えください。状態に合わせて進め方を調整します。多くの場合、炎症が落ち着くにつれて歯茎が引きしまり、処置時の不快感も少しずつ軽くなっていきます。
Q.通院を途中でやめるとどうなりますか?
取り除いた汚れが再びたまり、歯周病が再び進んでしまうことがあります。特に再評価やメンテナンスの前に中断すると、それまでの治療が活かしきれません。
症状が一時的に治まると治ったように感じやすいのですが、奥の炎症が残っていることもあります。仕事や予定で間が空きそうなときは、やめてしまう前に、まず相談していただければと思います。
Q.歯周病は完全に治りますか?
一度溶けてしまった骨が元どおりになるとは限らず、進行を止めて良い状態を保つことが治療の目標になります。だからこそ、治療後のメンテナンスが欠かせません。
また、糖尿病などの全身の状態や、喫煙が関わることもあります。歯茎だけの問題と捉えず、生活習慣も含めて見直していくことで、長く安定させやすくなります。
失った歯は戻りませんが、いま残っている歯を守ることは、これからのケア次第で十分に可能です。